今年も1年間お疲れ様でした。有馬記念で2万円をJRAに寄付したマッチョウィンプスです。
2017年12月23日。何でもない祝日が僕の記憶にこびりついて離れない1日になるとは考えてもみなかった。
この日の夜は熊本から遊びに来ていた高校の同級生ぶりゅーら君と共に酒でも飲もうかという予定があった。
その前にアルバイトがあったので、バイトが終わり次第合流するはずだったのだが、ぶりゅーら君とぼーちゃん(東京在住の同じく高校の同級生)は「今夜、新宿二丁目のゲイバーでバイトすることになった」と訳の分からない連絡を寄越してきたので、バイトを終えた僕は訳の分からないまま彼らが働いているゲイバーに入店した。
彼らは既にお客さんに飲まされたのか、会話もまともに出来ないほど酔っ払っていた。
僕からすればかなり酒に強いと思っていた2人がそんな状態だったので、やはり恐ろしい場所だと思いながらウイスキーの水割りを注文してチビチビ飲んでいると、ぶりゅーらとぼーちゃんが酔っ払って使えないからと、半ば無理矢理に退勤させられた。
ならばこの悍ましい世界から抜け出してしょーもない居酒屋にでも行こうと思っていると、女店員から、「君、友達が使えないから代打ね!入って!」と声をかけられた。
僕はこの世界でのしきたりを理解することを諦めた。
この空間で日本国憲法は通用しない。何を考えたって無駄だ。僕は脳みそを使うのをやめ、言われるがままにカウンターの中へと入った。
ざっとこの店の概要を説明することにする。
カウンター10席くらいの所謂BAR。従業員は店長、つまりママ(男→女)、普通の女店員、普通のおじさん店員、若いゲイの店員、そして僕。
カウンターの中へ入った僕はこの店のボスであるママに挨拶をした。
「友達が潰れてしまったので急遽入ることになりました、マッチョです。」
ママ「あら、アタシを楽にしてちょうだいね。」そこからドリンクの作り方やら、灰皿は吸い殻が二本たまったら交換することやら、仕事内容を簡易的に教えてもらった。
高校時代の部活を尋ねられラグビー部だったと伝えると、「私のセフレもラグビー部だったのよ」と言われたので苦笑いでその場をしのいだ。
意外にも、お客さんにはゲイなどの人はおらず、仕事帰りのサラリーマンやOLと訳の分からんおっちゃんが数人いるくらいだった。
接客経験のほとんど無い僕は、とにかく場を盛り上げようと必死で灰皿を交換するのを忘れていた。
すかさずママが「灰皿は!?」と注意してきたが、そんなことすっかり忘れていた僕は「灰皿?…灰皿で、海老蔵みたいに人を殴っちゃダメ!」とボケをかました所ママにビンタを喰らった。
これがお客さんにウケたのか、お客さんは笑ってくれた上に僕にドリンクを入れてくれた。(スタッフにドリンクを入れると1000円上乗せされる)
そこで緊張が少しほぐれ、徐々にお客さんとの会話も自然に出来るようになった。
これは俗に言うコミュ力とやらが鍛えられるぜ。年配の人の話題についていくのは結構難しいけど、逆に友人とはできない会話ができて楽しいな、、、などと意識高い系風なことを考えていた。
しかし、普段からこの店で働いている皆さんには到底及ばない。会話でうまくお客さんを盛り上げながらも、灰皿、おしぼり交換、氷の補充、ドリンクおかわりの催促など、あらゆる所に気を配っている。サービス業のプロはすごいなぁと感心してしまった。ママさん、かっけぇっす。
このお店にはカラオケもあって、100点を出すと、ママの、ロシアで工事したという下半身を見られるというルールだったのでお客さんは躍起になって歌っていた。
そして僕も何か歌えとリクエストを受けた。
何を隠そう、僕にとってカラオケで場を盛り上げるなんて朝飯前だ。僕のような変な声の奴は、キーの高い曲を張り切って歌えば大抵ウケる。
そして僕は、その辺のゆとり学生なんかより昔の曲のレパートリーが多い。多分。
よってこの場でのカラオケはノーアウト満塁で打順が回って来るようなものだった。
僕は中森明菜のDESIREを原キーで熱唱した。
「マッチョ君は21歳なのに昭和の曲を知っていて凄いね!」
得点こそ大したものではなかったが、綺麗な40代くらいの女性に褒められてとても興奮した。
他のお客さんの反応も結構良かった。
そんなこんなで閉店時間になり、後片付けをしているとママが頭を僕の肩に預けながら、「お腹減ってる?」と尋ねてきた。
正直、水で薄めて誤魔化したとは言え少し無理をして酒を飲んだし、何か食ったらゲロ吐くだろうなと思ったが、この状況でママの誘いを断れるはずもなく「腹ペコです!吉野家に行きたいです!」と即答し、吉野家までママとデートをした。
道中、ママはすれ違う人ほぼ全員に「お疲れ様です!」と挨拶されていた。やっぱりこの人スゲエや。
とにかくママに失礼のないように接していたので、ママは僕に好印象を持ってくれたようだった。言葉はキツいけど思ったことを正直に言ってくれるので、僕の働きを褒めてくれたときは素直に嬉しかった。
1日しか働かない僕の為に気を遣わせて申し訳ない気持ちになったので牛丼をガツガツと平らげた。牛丼をご馳走になってママと別れた。
別れ際に「ウチで働きなよ!」と言われたので「留年したら働きにきます!」と果たされないであろう約束を交わした。(まあ留年するのはあながち有り得ない話ではないけど)
最初は怖かったけど、ママをはじめあの店のスタッフにはまた会いたいと思う。ゲイバーという特殊な場所に常連として通う人の気持ちが分かった気がした。
ぶりゅーら君、ぼーちゃんもお疲れ様でした。
ゲイバーで働いてママに牛丼をご馳走になるという貴重な体験をした話でした。さようなら。よいお年を。